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「……あ? どこや、ここ」
ふと目をあけると、見慣れない天井が視界に入ったので、そう低い声音で呟く。
誰に言うともなしに発したものであったが、幸いな事にというか、横手から聞き慣れた声が疑問に応えてくれた。
「イグレシオン署にある医務室だ」
「……ヴェルセルクか」
横目で見ると、そこには手近な椅子に座り、雑誌を手にしたラキの姿が在った。
「目、覚めたかよ?」
問いかけるラキは一度たりとも雑誌から目を離さない。
対するオフィーリアも、顔を両手で覆い、しばらく思考を巡らせる。
……が、非常に残念な事に、こうなる前の記憶が朧気なものでしかない。
「……倒れた?」
「否。そこまではいってねぇ」
一応聞くと、やはり丁寧に答えてくれる。
そうして雑誌を傍のテーブルに置くと、ようやくの事で視線をオフィーリアへと向けたラキが続けた。
「けどまぁ、近いもんかな。あんた、結構切羽詰まってたみたいだし」
言われてほんの少しばかり思い出す。まさかとは思うのだが、その、“切羽詰まった”あまり形振り構わずに、ディアスブレイドを使ってトウジを呼び出していやしなかったかと……。
「え。もしかして俺、気ぃやられる前、……トウジ呼んでた……?」
嫌な予感がするとばかりに、それでも確認しなければと質問を重ねると、こちらの事情などついぞ知らないラキが、いつもの調子で頷いた。
「あんたの相棒だろ? あんた、自分で限界だからって、うちの課長補佐に呼ぶよう言ってたぜ」
ここで言う課長補佐とはつまり、シェイカーの事だろう。
やはり呼んでしまっていたかと、久々の軽率な行為に我が事ながら戦慄してしまう。
「念のため聞くんやけど」
もう全てが夢であって欲しいと願うと同時に、絶対現実なんだろうなぁという思いを込めて、最終的な質問をしようと決意する。
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