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移動中、二人は終始無言であった。
医務室を出て、陰契課のオフィスを横切り、短いような長いような廊下を経て、エレベーターへと乗り込む。
エレベーターの機動音だけがやけに耳につく中で、目的の階に着いた旨が知らされる。
ここから道場へは一直線だ。
逸る気持ちを抑えつつ、ドアを開けたオフィーリアが、後からついてきたラキと共に道場内に視線を走らせ、一瞬の内に状況を理解する。
ドアを開けた瞬間、全員の注目を集めたのだが、それには構わないオフィーリアが、壁際まで追い詰められ、既に血塗れで満身創痍な様子のアンダーテイカーを認めて、次にその前に立ちはだかるトウジに視線を定めた。
こちらはやはりというか、無傷であったし、しかも予想以上に怒っている様子である。
容赦なくアンダーテイカーを叩きのめしたのだろうなと理解る箇所が、瓦礫と化した壁や抉り取られた床からも推測出来た。
「あんたの相棒、マジでえげつねぇな」
隣で吐き捨てるラキは、最早怒りを通り越して呆れ返っているようだ。
「トウジ、俺はもう大丈夫やさかい。怒りを鎮めてくれ。一緒に帰ろ。な?」
一歩ずつ、ゆっくりと近付きながら、オフィーリアがトウジの背中に声をかける。
見たところ、不幸中の幸いというか、トウジはまだ、創世の民としての力は使っていないようだった。
そこのところを確認してから、トウジへと手を伸ばした。
「トウジ、俺はここにおる。大丈夫や。やから、頼むさけ。こっち向いてくれ」
「……オフィーリア」
言われたトウジが、持っていたダガーを淡い光と共に消滅させながら、ゆっくりと振り向く。
その表情、雰囲気からは、先刻まで道場内を支配していた怒りと殺気、そして明確なる殺意の色は消え去っていた。
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