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ーーここはイグレシオン。そう大都会でもなく、だからといって、ド田舎でもない。
よくあるような、特に大事件も起こらない、比較的長閑な街並みが並ぶ、平和な場所である。
そんなイグレシオンに佇む、何だか場違いな所轄署がある。
イグレシオン署陰契課。世間からは吸血鬼と呼ばれ、恐れられる“昏きもの”を主に雇い、人間も入り交じって働く。
そんな、人間が犯す犯罪専門ではない、何か超常現象とか、“昏きもの”が起こす事件や事故を取り締まるような、いわゆる一つの、対“昏きもの”用の警察署である。
そんなイグレシオン署陰契課の地下にある道場で、とある二人の男が対峙していた。
一人は蒼く太めのバンダナで額を隠し、肩より少し長めのドレッドヘアーに、右目はエメラルドグリーンに左目は蒼といったオッドアイを持つ、かなり長身でごつい男、トウジ=X=ムラサメ。
そしてもう一人は、連れてこられる際に、相棒であるシェイカーから事情を聞きはしたが、納得がいっていない様子の現イグレシオン署陰契課、課長補佐を勤めるアンダーテイカー=ヴァン=イレブンジーズであった。
肩に少しかかるくらいのウェーブがかった青い髪を揺らし、切れ長の赤い瞳を僅かに泳がせている。
二人がこれから試合をする。
そんな話を聞きつけた、イースタン親子とレイカが駆けつけている。
しかもシェイカーの右隣には、とてつもなくわくわくした表情と雰囲気を隠さない、イグレシオン署課長のエルファリス=シェラ=ヴェスバニアまでもが立ち会っている。
その上今回は、オフィーリアの要請に伴い、図らずも事態に巻き込んでしまった形の、ディアスブレイド=ウェルゼ=アーチェスも見学にきているのだ。
「どうしてこんな事になっちゃったんだろうねぇ」
皆が緊張感のない表情で立っている中、一人だけ事情を把握しているシェイカーが、長いため息を吐きながら肩を落とす。
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