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この闘いを唯一止められる肝心のオフィーリアが倒れていて、どうしようもない状態では打つ手がない。
「……」
アニーはそれ以上、何を言う事もしないようだ。
再び前を向き、対峙したままの二人を見詰めだす。
それで仕方なく、シェイカーも審判役に徹する事を決意した。
トウジが困惑を隠さないアンダーテイカーを睨む。
「初めに言っておく。俺をただの人間と侮ると、痛い目を見るとな」
「否……。それは。しかし、本当に良いのかムラサメ刑事? 俺も手加減をしなくて大丈夫と言ったが」
そう言えばアンダーテイカーは、トウジの正体をまだ知らされていない筈だと思い至る。
だからこそ、上級で、且つ実戦経験の多い“昏きもの”であるアンダーテイカーが、本当に手加減なしで闘っても大丈夫なものかと問うているのだ。
言われたトウジの表情が、僅かに厳しいものへと変わる。
「構わない。お前の性根を叩き直すための手合わせだ。こちらも手加減などするつもりはない」
してくれ! とは心の中で叫んだシェイカーだったが、一度「止めない」と約束した手前、行動に移す事はしない。
だが、頭では理解していても、気持ちが追い付いていないのだ。
そんな、始めの合図をするのを迷っているシェイカーを、トウジが言い知れぬ迫力を伴った瞳でじろりと睨む。
これは急かされている。
今はアンダーテイカーに怒りの矛先が向けられているとはいえ、シェイカーも同様に、トウジからの怒りを買っているのだ。
つまり、とてもではないが、他人事ではない状況であるので、呑気に相棒の心配などしていられないのである。
合図を引き伸ばしたつもりではないが、トウジからすればそうとしか見えないのだろう。
「……始め!」
仕方なく、上げた片手を勢い良く下ろしながらそう発する事で、闘いの火蓋を切ったのだったーー。
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