第二章・ー気付けぬ罪に、罰をー

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 合図と共に、トウジが何もない空間から発生させたダガーを、大きな両手に握り締める。  持ち手にブルーサファイアで装飾を施した、鈍色に光る刃先は攻撃を受けずとも鋭く、美しいフォルムを持つ一級品だと見て取れた。  身長が二メートル近くもあるがっしりとしたあの体躯で、接近戦に適した短剣を得意とするのかと、僅かながらギャップを感じる。  だが、トウジはダガーを眼前に構えると、低く重心を取り踏み込む態勢で言った。 「行くぞ」  その言葉が終わらない一瞬の内に、様子見であるのか、“ゲリュオン”ではない真剣を構えるアンダーテイカーの間合いまで走り寄る。  オフィーリア達程でもないが、トウジもそこそこのスピードを誇っているようだった。  低い位置からダガーで斬り上げるトウジに、アンダーテイカーも刃先を受け留め、負けじと応戦する。  金属がぶつかり合い、激しく火花が飛び散る。  だが、トウジは構わず器用にも、もう片方に持つダガーで真剣を勢い良く払い退けると、手隙になったダガーで間髪を容れず掬い上げ、アンダーテイカーの手から弾き飛ばし、そのまま足で後方へとスライドさせたのだ。  ーーこの間、まさに刹那とも言える動きで、トウジは容赦なくクロスさせたダガーをアンダーテイカーの首筋に当てる。 「……手加減をするなと、言った筈だ」  当てられた刃先から一筋、鮮血が滴り落ちる。  アンダーテイカーの頬を冷や汗が伝う。  仮にもあのオフィーリアが認めた相棒、契約主であるのだから、アンダーテイカーとて決してトウジを侮っていた訳ではない。  だが、としばし歯噛みする。  ダガー二本でここまで良いように扱われるとは、さすがに想像もしていなかった。  今、トウジが手加減をしていなければ、アンダーテイカーは確実に死んでいただろう。  ーー“ゲリュオン”を、出し渋ったのは読みが甘かったかと、小さく息を吐いたアンダーテイカーが返す。
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