第二章・ー気付けぬ罪に、罰をー

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「手加減など、しているつもりはないのだが……」  言われたトウジが、気に入らないように片眉をぴくりと上げる。  そうしてすぐ、二ステップ程地面を踏み締め大きく後方へ退いたかと思うと、すぐさまダガーを自らの眼前で素早く構え直し、殺意の籠った瞳も隠さずアンダーテイカーを睨みつけた。 「そうか。ならば、イレブンジーズ課長……、お前に勝機はないと思え」 「何……?」  どうやらトウジは、今度こそ手加減せずに挑む気でいるようだった。  アンダーテイカーが問いかけようと前に出るのも厭うように、再びクロスさせたダガーを一閃する。  距離はある。  だが、直接当てにきたのではないと瞬時に判断したアンダーテイカーが、咄嗟に“ゲリュオン”を袖口から取り出し、真空の刃を受け止めた。 「くっ……!」  一撃が、重いーー。  受け切れず(かかと)が地面を抉りながら、衝撃で身体ごと後方の壁へと背中から叩き付けられた。 「がはっ……!」  鮮血を吐き散らすアンダーテイカーの滅多に見ない姿に、シェイカーが思わず息を呑む。  恐らくだが、骨を何本かもっていかれた。  これは、想像していたよりも非常マズい事態なのではないだろうかと、今更ながらに冷や汗が頬を伝う。  たったの一撃だ。  しかも、直接攻撃を喰らった訳ではない。ただ、真空の刃を“ゲリュオン”で受け止めただけだ。  それなのに、あの重さと威力は何だと、目の当たりにした現実を理解出来ないまま、シェイカーはトウジへと視線を移す。  トウジは相変わらず怒っている。  あの時オフィーリアが言ったのは、「俺らが束になってかかって止めたかて、秒で殺られる」というのはまさか、音でしか聞かなかったから、安易な考えで勘違いしていたが、“やられる”というのは本当の意味で殺される。  ……という事か?  そこまで思い至り、シェイカーは再び、ごくりと息を呑む。  かつての同僚ながら、死ぬ程怖い存在だった。
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