フィラメントに流す好奇心

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   私の耳が他の人より良いことで周りに迷惑をかけると知ったお父さんは、私には少し大きな白いヘッドフォンを買ってくれた。小学生が付けるには高価な、多分凄く良いやつ。きっとそれがお父さんなりの心配の仕方だったんだと思う。私はそれがすっごく嬉しくて、授業中以外のどんなときも欠かさずに身につけていた。なのに。 「あ〜あ……」  さっき隣のクラスの子に言われた言葉が頭から離れない。 『それズルいよね〜わたしも音楽とか聞きながら帰りた〜い』  そう投げかけられた言葉がずっとぐるぐる回る。別に好きでしてるわけじゃない。けど、これはお父さんに買ってもらった大切なヘッドフォンで、私自身もこれがないとすごく困るから。それなのにそんな言い方をされたら。  早く家に帰りたい。  そんな気持ちばかりが頭の中を埋めつくしていく。 「今なら、いいかな」  嫌なことを言う子も居ないし、少しだけ。少しだけ楽しい音を聞きたくてヘッドフォンを外した。普段より拾う音が多いことに驚きながら、それでも一歩一歩を踏みしめて歩いた。私に厄介事ばかりを運んでくるこの耳は、それでも昔は私の遊び相手だったから。そんなことを思い出して、つい砂利を踏みしめる力を強くしてしまう。強弱を付けて踏みしめれば、ザッザッと鳴って転がる音の塊。そんな音の違いが楽しくて、自然と歩みがスキップへと変わっていく。  私はこうしてたまに、ヘッドフォンを外して聞きたい音だけを聞いてみたりする。
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