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私に厄介事ばかりを運んでくるこの耳が褒められて少し、ううん、すごく嬉しかった。それにここにはたくさんの雨音が溢れているのに頭が痛くならない。不思議だった。どの音も混ざらずに、独立して音を立てている。慣れてくれば耳を当てずとも聞こえてくるようになった雨音たちを私は楽しむように端から聞いていった。
「おばあさん」
「なんだい」
「おばあさんはここがボロ屋敷って呼ばれていることを知ってるの?」
「ふん、そんなの知ってるさね。私もね、あんたほどじゃないけど耳がいいんだ」
後ろを向いたまま表情を見せないおばあさんの口調は少しだけ静かだった気がする。
「おばあさん、私ここ好き。音がたくさんあるのに全然うるさくないもん。ここなら大丈夫。だから、好き」
「よく喋るね。そうかい」
後ろで手を組んだままのおばあさんの手がぎゅっと強く握られていて、私はなんだか、嬉しくなった。
ドドドドドド!
途端、地震かと思うほどの大きな音に耳を塞ぐ私を、さっと庇うように肩を持ってくれたおばあさん。その後は近くにあった豆電球が落ちないようにせっせっと片付けをしながらなにやら準備をしているようだった。
「来るよ」
「えっ?」
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