フィラメントに流す好奇心

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「おばあさん、私のこれ使う?」  私が取り出したのはランドセルの中にあったクリアファイルや定規、なわとび。 「良いのかい?濡れてびしゃびしゃになるよ」 「もう充分濡れてるから、へーきへーき」  しげしげと私の持ち物を見たおばあさんは、ぱっと顔色を明るくして空に掲げる。 「小学生の持ち物なんて思いつきやしなかった!今日はいい音が採れるよきっと。ほら、嵐だ!」  強く吹く風が私たちを巻き込んだ。 「だしだし」 「ぎがが、ぎがが」 「ずばーっ」  聞いたことも無い雨音。今日の嵐はとても大きい。けど。わはは、と声を上げて笑うおばあさんの目に寄る皺がとても素敵で、私も真似をして大声を上げながら音を採っていった。たくさん転がる足元の豆電球。踏まないように気をつけながら、私ももっともっとたくさんの音と出会いたくて、聞く、採る。 「あっ!そうだ!おばあさんちょっと待ってて!」 「なんだい?」 「あっちに捨てられたボロボロのビニール傘があったの!面白い音、採れないかなあ?」 「いいね、持ってきてくれるかい?」  うん!と返事をした私は走って自販機横のフェンスまで傘を取りに行った。その時。
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