フィラメントに流す好奇心

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 私の耳はいつも余計なものまで拾ってしまう。  とても些細な音の変化や、高低差、他の人には聞こえないような遠くの小さな音までをも拾って、この耳は私に届ける。それは恵まれたプレゼントなんかじゃなくって、まだたった十年しか生きてきていない私にだって分かるほどには、ただただ億劫で面倒なものでしかなかった。  もっと幼い頃は、いろいろな音が聞こえるのがうれしくて、よく他の人に話して回っていた。あのカラスは他のカラスよりもお喋りが上手だとか、遠くの雨音を聞いて雨が降るタイミングを教えたりだとか、お友達のリコーダーの音程がズレているのが気になって泣きながら伝えたら、どうも相手の気に障ったらしく大喧嘩になったことだってあった。  だからこの耳は、いつも厄介事ばかりを運んでくる。
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