死化粧

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 どうして、姉が私の携帯番号を知っていたのか。それは、わからない。  ただ、父や母の連絡先ではなく、私だけの携帯番号を、姉は携帯のメモリに残していたのだと言う。姉は、私の連絡先を知っていた。  だけど、この十八年間、一度として連絡をすることはなかった。  そこに、どんな思いがあったのか。  携帯のメモリに「妹」と私の番号を登録した時、姉はどんな思いでいたのか。  それはもう、聞くことはできない。  永遠に、聞くことはできないのだ。  そう思った瞬間。  何故かふいに、涙が溢れて来た。 「お姉ちゃん……」  自分勝手な姉だった。  家族よりも男を選んで、残された私達家族は、散々な目にあった。  だけど。  そう、だけど。  とても、優しくて。  とても、綺麗で。  私の、自慢の姉だった。 『葉月』  そう……この人は、姉だった。  私の、たった一人の姉だった。
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