死化粧

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 夜明け前までには、まだ時間があった。  私は、近くのコンビニで買って来た化粧品を、姉が横たわるベッドの上にビニール袋ごと、ポンッと置く。  発見された時、死後一日経っていたという姉は、今既に二日経とうとしていて、死斑(しはん)が顔中に出ていた。  姉の死を知ったのは、仕事の残業で疲れた体を、ノンアルコールのビールで癒していた時だった。  携帯が鳴り、「はい」と出た私に、携帯にかけてきた相手は、自分が警察の人間だと言う事と、姉の名を告げて、この人を知っているか、と尋ねてきた。 「姉です」  と私が答えると、警察は、姉の死を私に告げた。  私は、とりもなおさず、深夜車を走らせて、姉の住んでいた街まで来た。  私の住む街から、高速を使って二時間。  案外近いところに、姉は住んでいた。  着いて早々警察署に駆け込むと、当直だった人が、霊安室まで案内してくれた。 「どうも、心不全だったみたいです」  と、その人が姉の死因を教えてくれた。
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