死化粧

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 まさか、十八年ぶりに再会する姉が死体になっているとは、思いもしなかった。―と言うか、二度と会わないだろう、と思っていた。  姉は、私が知らない遠い場所で。  生きて、そして死んでいくものだと思っていた。  世の中には、そんな人達はたくさんいる。  けれど、散々私達家族に迷惑をかけた姉は、結局その死後まで私達家族の手をわずらわせるのだ。  皮肉だな、と思った。  姉が家族と引き換えに選んだ男は、おそらく姉を選ばなかったであろうことは、姉がその死まで「美坂(みまさか)」と言う、私と同じ苗字を名乗っていたことからも察することはできた。  そうして挙句の果ての、死。  姉が私の高校の担任と駆け落ちした後、私達はかつての知人友人達とは縁を切っていた。  狭いあの田舎町では、仕方のないことだった。
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