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VIPと金色のプレートのかかった扉から出てきた私たちは、高級ホテルの従業員通路を歩き出した。
ただの従業員通路ではない。
VIP専用に作られている為、普段は従業員たちが行き交う通路だが、本館と全く変わらない造りになっている。
豪華絢爛なシャンデリアが所々に下がっており、落ち着いた黒の壁紙が大人の雰囲気を醸し出し
、気持ちもそれに伴い品良く歩いてしまう。
アンティーク系の家具が、あちこちに置かれている。
どの家具も高級ブランドのものだった。
シックに過ごす為に、工夫されて作られているのだと、勉強になることばかりだ。
洗い立てのようなフカフカの紅い絨毯は、足裏への負担を減らしてくれる。
お忍び用に作られたその部屋は、こうして野木くんたちが使っていたり、たまにヤクザ達の定例会もそこで行われているようだった。
従業員用のエレベーターもVIPが乗ることが前提らしく、その中もシンプルなのに上品さが漂う造りで、毎回見惚れてしまう。
そして、今の野木くんたちの雰囲気とよく合っていて、鼻血が出そうなくらい美しく見えて、目の前がクラクラした。
本当にクラクラしていたのか、丈夫な腕がサッと腰に回される。
「大丈夫?」
やっぱ無理してるじゃん。と、心配そうにアクアグレイの瞳がこちらを見下ろす。
彼の腕に支えられ、ドキドキした。
昨夜のことを思い出すと、照れくさくて顔を直視できない。
それを具合が悪いと受け取ったのか、ヒョイと脚をもう片方の手で掬い上げられる。
視界がぐらりとして、咄嗟に彼の首にしがみついた。
「この方が辛くないでしょ?」
「野木くんが疲れちゃうよ?!重いだろうし、野木くんあまり寝てないのに」
そんな柔じゃないから気にしないでよと、抱えられた腕の中でギュッとされた。
「あー、ラブラブ鬱陶しいーー」
尾崎が、心の篭ってない声で、棒読みしながらエレベーターの開くボタンを押してくれている。
私たちが降りるのを待ってくれていたようだ。
「はぁっ。俺の彼女可愛くて堪んない」
尾崎さんの声など耳に届いていないのか、俺の癒し!本当、天使っ!!
と、オーバーに褒め称えてくれる。
スリスリと頬をすり寄せてきて、ふわふわなホワイトブロンドからシトラスの香りがして、ホッとしてしまう。
この香りがすると、自然と心も身体もほぐれてしまう。
胸をくすぐられるような感覚に浸っていると、ホテルの裏口から出られる小さなロビーに出た。
が、そこに黒尽くめの男たちが整列して並んで立っている。
これは、何事なの?!
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