ヤンデレ彼氏はヤクザで御曹司です

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親子制度?? そこから不思議に思っていると、右腕を差し出してきた水飼さんの腕に、そっと手を置いた。 エスコートしてくれるのか、紳士的な動作にドキドキしてしまう。 ヤクザってもっと乱暴なイメージだけど、野木くんといい、秋月先生も紳士なんだよね。 「仲良くなるキッカケにもなるかと思いまして。僭越ながら説明致します。 まず、(わたくし)たちが絶対的服従を強いられる序列なのですが、親子関係でそれを表現しているんです。 つまり、盃を交わした組員はみんな“家族”となります」 「家族なんですか?」 「はい。血の繋がりが無くても家族になります。 まず、ピラミッド型で言う頂点にいるのが組長で、組長を(父)と表現します。親の言うことはでしょう?その下はみんなとなります。 渚さんはそのピラミッド型の下全員に指示し、統率をしています。 これが(兄)と表現されるんです。私からみた彼は年下ですが、「兄貴」と呼称します。 組長のことは「オヤジ」と呼ぶことになるんですよ。面白いでしょう?」 へぇ。そういえば一誠のドラマでも兄貴!とかよく呼ばれてたな。そういう意味があったのかと納得していると、水飼さんは話を続けた。 「我々組織はお給料など存在していません。 なので自分たちでお金を稼ぐ方法を見つけて、居場所を提供してくれている「組織」にお金を献上します。そこから差し引かれたのが自分のお金となり、生活していくことになります」 「お給料ないんですか?!凄く忙しくしてるのに?どうして」 お給料も存在していないのに、何故ヤクザの道に進むことになってしまったのか。 私からすると、何故そんなメリットのないものになろうとしたのか疑問だ。 あぁ、そうかと思い出したように彼は淡々と優しい口調で話していく。 「別にみんな進んでヤクザになりたくてなったわけではないんですよ。天涯孤独だったり、社会的に馴染めなかったり、世間を疎ましく思っていたりと、それぞれ負の感情を持った人がほとんどです。 ヤクザにならざるを得なかった者がここにいるだけですね。一般人に戻って生活出来るなら戻って、普通にサラリーマンしてます。そのほうが何倍も楽ですし」 「辞めないのは、また何か理由があるからですか?」 寂しそうな表情に変わったのを見て、口噤む。 「社会に“居場所”が無いからですよ。それを理解してるから、辞めたくてもやめられません。 どんなに苦しかろうが、辛かろうが“ここ”には家族がいます。厳しくも、優しく、同じ境遇の人たちが集まって過ごしている。 それがどれほど心強いのかを知ってしまったら、社会で1人で戦うことより、集まって居た方が安心なんです」 私には理解しきれないものが彼等にはあって、心に傷を負っているのだと感じた。 いつのまにかVIP専用通路までエスコートしてくれていた。 水飼さんの話に興味津々だったのだと気がつく。 どうやってここまできたのか記憶がないくらいに夢中になって聞いていたようだ。 大理石の床より、やはりこのふかふかの絨毯が脚への普段が少なくてホッとする。 「まぁ、渚さんがこちらに来るとは思ってもみませんでしたけどね」 それを聞き、ハッとする。 「それは、私のせいで、、、」 静かに視線を逸らし、ドクドクと変に心臓が音を立てた。 「そうなんですね。でも、彼の生い立ちからすると仕方ないですね。ヤクザの息子というだけで偏見持たれますし、いろんな制限されますから。 それだけでもう、彼はヤクザになり得るものは出来上がっていたわけです。貴女のせいではないかと」 フォローしてくれているのだろうか。 ひときわ大きな扉を押し開けてくれた水飼さんに促されて、昨晩彼に愛された、その部屋に戻ってきたのだと認識する。 「ありがとうございます」 「また何か用がありましたら、呼んで下さい。 (わたくし)は廊下に立ってますから」 「え、廊下ですか?」 てっきり仕事に行くのだと思っていた。 驚き振り返ると、水飼さんは「今日の任務は護衛になったので」と微笑んでいる。 もしかして、私がここに残ると言ったから、野木くんが彼にお願いしたのかな。 私ってそんな危なっかしくみえるのかしら。 「すみません、私のせいで」と謝ると、彼は驚いたのか目を丸くさせて首を傾げた。 「当然のことです。 いつ襲撃されるかわかりませんから」 襲撃?! 「なんでそんな物騒な言葉が出てくるんですか?!」 「なんも聞かされてませんか?7年前、うちの幹部が何人かやられてしまいました。その時の溝で、渚さんのタマを取ろうと必死になってる会がありまして。 最近は“半グレ”とも呼ばれる厄介なグループも出てきて、こちらも必死なんですよ。 特にその半グレたちが起こす事件は酷くて。 我々極道は、一般人には手を出すことはまずないんですけど、半グレは違います。 もう10年近く貴女は狙われ続けてましたから、てっきり知っているものと思ってました」 私が話すことじゃなかったかもしれませんね。とサラッと笑って言う。 10年、、、?! 私、そんな長い間狙われてきてたの?!
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