ヤクザだけど高級ホテルの支配人になります

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メイク!!! 声にならない悲鳴をあげながら、慌てて短時間メイク用の顔パックを貼り付け、保湿後にメイクを5分で仕上げた。 「めっちゃナチュラルメイクだけどいいの?」 「メガネかけるから大丈夫なんです」 尾崎さんがもっと綺麗に出来るのに!と指をそわつかせながら言う。 「メガネかけると鈍臭いのよねぇ。普段みたいにコンタクトにすればいいのに」 たしかにコンタクトの方が鼻の脇も痛くならないし、跡にも残らないから楽なのだが。 「メガネの方が経済的で、華美に見えない&出来る女に見えるからです!」 「すんごい庶民な発言。そんでそのセリフは出来ない女が言うのよ」 華美に見えないってどーゆーこと?? 解せない表情を2人でしながら、荷物を持って家を出た。 尾崎さんが運転する黒いセダンは、相変わらずピカピカで汚れや埃一つついていない。 「毎回思うんですが、車綺麗ですよね。尾崎さんがやってるんですか?」 車の点検をして乗り込む尾崎さんは、バックミラー越しに言う。 「若い衆って言って、洗車係がいるの。 その子が責任持って毎朝洗車するのよ。 ミニバンは権田が洗車担当よ。雨の日でも必ず手洗い洗車。近くのガソリンスタンドへ行って、手洗い専用の道具をそこで借りて、自分たちでプロと同じことをするよう教育してるの」 「え?!ガソリンスタンドって社員じゃない人でも道具とか貸してもらえるんですか??」 「んなばかな。 昔からの繋がりがあるスタンドだからこそ、貸してくれるのよ。一般人がそんなことしたら変な客扱いされるからやめなさいね」 「洗車機とかではだめなんですか?」 「だめだめ!高級車を洗車機に入れるとかとんでもない。それから、洗車をスタンドの人にやってもらうのもうちではNGなのよ」 「手洗いにこだわるんですね!」 「というより、カタギの人間が怯えちゃうでしょ? ヤクザの車傷つけた?!とか、洗い残しがあった!!とかね。うちとしてもそれで揉めたいわけじゃないから、必ず洗車係が気を遣って洗車するの。 車が汚れていたら、その洗車係の子の怠慢ってことでお仕置きするしね」 きっと尾崎さんは可愛い感じで“お仕置き”と言っているけど、ヤクザの言うお仕置きって、怖いんだろうな、、、。 通りでいつみてもピカピカなわけだ。 洗い残しがあるだけでお仕置きとか、怖すぎる。 「ナギたんも洗車一度失敗して、石畳の刑にあったことあるわよね?」 「ん、あぁ、そんなこともあったね」 「石畳の刑とは?!」 不安な名前を聞いて、思わず声を上げてしまう。 尾崎さんは愉快そうに説明してくれた。 「あら知らない?江戸時代にあったって言われてる拷問の一つ。 三角木材を並べた上に正座させて、その膝の上に石を置いていくのよ。 そうすることで、脛や骨に木材の角が食い込んでものすっごい痛いのよ〜!鬱血で済めばいいけど、最悪、乗せる石や担当する人がヤバいと骨にビビ入るから」 ひぃーーーっ?!! 「野木くん怪我しなかったの?!」 笑って言ってるけどやってること怖すぎてゾッとする。 「いや、用意された角材めっちゃ尖ってたから、血だらけだったよ。洗車しっかりやろうって次の日頑張った」 「見習い期間の間はだいたいこの石抱き(石畳の刑)をみんな経験させられるから、トラウマになってみんな必死でやるのよね!今しくじることなんかないから、やることないけど」 極道の世界って大変というか、地獄なのでは。
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