ヤクザだけど高級ホテルの支配人になります

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「野木くんはいつから見習い?やってたの?」 「正式な見習いやってないよ。俺が勝手に見習いと同じことをして、メンバーと思い込んでた人にしごかれただけ」 「懐かしいー! しごいた本人は、組長の息子やっちゃってるよー?!って騒ぎになって、その人も同じ罰受けさせられてたわね」 朝からこんな濃厚な話を聞けるとは思わなったが、野木くんの新しい話が聞けたのがとても嬉しかった。 極道について飲み込んでいる自分にも驚きを隠せないけど。 尾崎さんが野木くんのやらかした話や武勇伝を語ってくれてる間に、エデンガーデンに着いてしまった。 「野木くん、尾崎さん送ってくれてありがとうございます」 「お仕事頑張ってね」 ドアを開けてくれた尾崎さんのエスコートで降りる。 野木くんは車内からこちらを見上げて、青い瞳が弧を描いて言った。 「お見送りのキスしてほしい?」 ホテルの裏エントランスだが、従業員に見られてしまうかもしれない。 「いいですっ!」 きゅっと唇を締めると、彼はクスクスと楽しそうに笑った。 「たくさんしてあげるね」 「??? 人がいないところでお願いします。 帰る時また連絡するね!」 低めのヒールでタッと振り返って手を振った。 「で、ナギたんはいつ“GM”になるの?」 彼女の姿がホテルエントランスの先にある玄関ポーチへ向かうのを見て、悪戯に笑う少年のような顔をした白髪の男に問いかけた。 「もう取締役会で決議されてるから、“今日から”かなー。仕事が早くて助かるね」 「スーツはどーするの?」 「着替えなきゃね。とりあえずこの髪の毛なんとかしなきゃなー」 「ホワイトブロンドだと悪目立ちするものね。 時間あるなら美容院行く?」 「予約しておいたから行くよ。くそ親父には今日は軽く挨拶周りで良いって言われてるし」 「じゃあ明日から本格的にでいいのね」 「ん。乙葉がどんな反応するのか楽しみだなー」 「株主たち買収されてるって知ったら青ざめることでしょうねぇ」 尾崎は苦笑を零して、シフトレバーを上げた。 「じゃ、買収したようには見えないくらい、爽やかで優しい紳士らしく仕上げなきゃいけないわね〜」 「世の中お金で回りすぎてて怖いな」 ほんとねと尾崎はため息をこれでもかってくらい大きくついたのだった。
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