困ります!ジェネラルマネージャー!!

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困ります!ジェネラルマネージャー!!

「初めまして。今日からエデンガーデンホテルの一員となりました、如月乙葉です」 1日研修をこれから受けるため、各部門に顔を出して挨拶に回った。 けれど、私は別に全部門に顔出す必要ないと思うんだけど、、、、。 隣に立っているカチッとしたスーツを着こなしているは、1人1人の社員と顔を覚えていくと意気込んでいた。 「あの、、私はいつまでついて回れば良いのですか?」 上司ということもあり、丁寧な言葉遣いを使わねばと肩を張っていると、仕事モードな顔なのか、目元はキリリとしているのに、瞳の中には愛しさが溢れたものがこちらに向けられた。 「だなんて役職で呼ばないで、さっきみたいにさんって言ってくれると嬉しいのになぁ」 人目があるせいか、家にいる時と違って適度な距離を保ってくれていた。 けれど、彼は今にも手を出しても良いんだよ?と言わんばかりの視線を送ってくる。 「がそう呼べと仰るなら!」 「あくまでも仕事モードに持っていくんだね。真面目だなぁ」 私情を挟まない!と断言したのに、目の前にその本人がいるとなると、挟みそうになって頭がクラクラした。 ここは職場!新しい職場なのだ! しっかりしろ、乙葉! 髪の毛を黒く染めたことはもちろん、支配人としてそばにいることももちろん、いちフロント従業員として雇われる身だというのに、なぜ隣に居続けるのかも不思議だった。 「聞きたいことは山ほどあるし、びっくりしたし、もうあたまの中はパニックだから、私を新しい環境に慣れさせる落ち着いた気持ちにさせて欲しいです」 切実な気持ちが口から溢れてくる。 久々に見た野木くんの黒髪は、見事なまでに真っ黒だった。それでいて艶々だから、どこの美容院行けばそんな綺麗になるの?と私情が入ってきてしまう。 「乙葉をびっくりさせたかったんだー!もう少し腰を抜かしてくれると思ってたんだけど、嬉しくなかった??」 出来ることなら一緒に働きたくなかった。 野木くんのことだ。 絶対色々ちょっかい出してくるに違いない。 「嬉しい、、、けど、仕事は仕事として頑張りたいから、お手柔らかにお願いしますね」 もう仕事モードで話せばいいのか、普段の私でいたらいいのか訳分からんことになっている。 混乱で目を回している私を見て、野木くんは満足げにニヤニヤしているのだから、悪い人である。 「それにしても、ホテルの制服着てるってだけで、凄いエロいことばかり浮かんじゃうなぁ。 ちょっとあとで試しに一室借りて“支配人”にされちゃうやつやってみない?」 「職権濫用!!それに仕事中!公私混同しないで?!!」 「真面目な乙葉も好きだなぁ。逆に虐げられるパターンも良さそう。ネクタイ掴まれて罵られてるのも唆るなぁ」 その爽やかイケメンフェイスで何を堂々と、とんでもない発言をかましてくれてるのだろう。 恥ずかしくなって頬を赤らめていると、彼は愉快そうに笑った。 「困ります、!」 ムッとした顔を彼に向ければ、それにならって顔を引き締めて言う。 「乙葉と同じようにフロントにつきたかったなぁ」 無理に決まっている。 野木くんの仕事ぶりは知らないけれど、少なくとも学生時代の彼を見る限り、あの頃よりも手腕は凄いと思う。 あの膨大な勉強を効率よく進めて、人を使うことやコミニケーション能力の高い彼に相応しいポジションだと感じる。 あとは経験によるものや培ってきたものがものを言うだろうが、、、。 言われてみたらいろんな資格を取っていたようだったし、継ぐ気でいる、、、のか? それともカモフラージュ?? だめだ、野木くんが何を考えて行動してるのかさっぱりわかんない!! 「CEOがダメだと言うから仕方ないね」 仕方ない。でやれるあたり凄いのだが。 若頭のポジションはどうなるのだろうかと私が心配しても仕方ないのだが、野木くんがどうして支配人になろうとしているのかを考えなきゃいけない気がした。 彼がヤクザの者だとみんな知っているのか?それともひた隠しされているのか。 下手なことは言えないので、口を噤む。 通り過ぎていく他のスタッフたちは、野木くんと目が合うと頬を赤らめて視線を下に向けていたり、ぽーっとさせて見惚れている子も見かけた。 やっぱ野木くんの魅力はどこへ行ってもこんな光景を見れるんだな。 なんか日常すぎて慣れてしまっていたから、こうして野木くんと一定の距離感でいるとそれが異常なのだと気が付いた。 「綺麗な人いっぱいだな、、、」 通り過ぎていくフロント受付の子やハウスメイドの子達を見てそわつく。 口に出ていたらしい声に反応してか、がこちらに向き直って顔を覗き込んだ。 「乙葉が1番綺麗なんだから自信持ってよ?」 何故か彼がムッとしているから、困惑した。 私がムッとしてるならわかるのに、何故? 「尾崎さんが鈍臭いって言ってたの聞いてなかったの?」 私もそう思っていたし、可愛いとは自分では思わない。 「俺の言葉より琴巳の言葉信じるってこと?」 そう、、、いうことになるだろうか。 まさか秘書ではなくフロントになるなら、コンタクトにしてくれば良かったかな。 頷くことなく視線を足元に向けてると、野木くんはポケットから何かを取り出し、制服の上着ポケットにサッと入れてきた。 「メガネで自分を守っているのだとしたら、そんなの外しなよ。俺が隣にいるんだから」 たしかにメガネをしていることで、周囲と一線を引いてきていた。 溶け込もうとしたいけど、やはり新境地は怖いし、仕事ができないと思われるのが怖かった。 私の周りにいる人たちがどれだけ凄いのかを見てきたからこそ、不安で仕方ない。 自分はどれだけ役に立てているのか、今の自分に自信が持てなかった。 秘書になりたかったわけじゃないし、野木くんのお父さんからも期待していないと言葉をかけられてしまっては、自信など持てるわけがないのに。 だけど、野木くんは大丈夫だと言うのだ。 どこからそんな根拠があって大丈夫だと言うのか。
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