困ります!ジェネラルマネージャー!!

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「一緒に出席ってことでいい?」 一瞬、なんて答えたらいいのかわからなかった。 彼が目の前から居なくなってしまうのでは。 あのシークレットパーティーは、夢のように楽しかったのと同時に、思い出すことを拒絶したくなるものだったから。 「同じことになるかもって、怖くなってる?」 暗くなる彼の表情と声のトーンは、心配させまいと私の手を握り締め、安心させようと柔らかな眼差しを送って言う。 「その日はずっと一緒にいるって約束する」 「ほんと?」 「ん、ほんと」 「銃持った怖い人たち来たりしない?」 「そうさせないよう警備体制はばっちりにしておくよ。というより、俺がやらなくてもそうなるよ」 諦めのようなため息を零している彼を見上げて、首を傾げた。 「とにかく、その日は絶対ってほどに大丈夫だと思うよ」 確信めいた力強い瞳で彼は言い切った。 「そうだね、くすりくんにも会いたいし、お世話になった人に挨拶もしたいから行ってみようかな」 「うん、きっと喜ぶよ」 皇さんが心配だけど、警備体制万全だと言うから行ってみよう。 「2人とも、早めに両家に挨拶しに行きなさいね」 念押しするように野木社長が私たちに話しかけてくる。 目の前のシェフがメインディッシュの和牛を鉄板の上で焼いてくれているのを見たかったが、野木くんが口を挟む。 「まだ時期じゃないんだってば」 「安定を待ってたらいつまで経っても結婚なんか出来ないよ、渚」 「タイミングを見ているだけだ」 「今がそのタイミングだよ」 「親父は俺に跡を継いでもらいたいだけだろ?」 「それもあるけど、純粋に君たちの結婚を望んでるから言ってるんだ」 自分勝手だなーと不貞腐れている野木くんだったが、心なしか嬉しそうにしているのを見て、口元が緩くなった。 野木社長たちの遅めのランチを終えて、貸し出しの制服をまた着替えた。 エデングランドホテルでは自己管理する制服ではない。出勤すると毎回クリーニングされた制服をその日着ることになる。 とてもありがたいサービスだ。 おかげで鉄板臭はかなりよくなった。 野木くんとともにスプレータイプのドライシャンプーをして、歯磨き、マウスウォッシュで臭いを消し去る。 従業員用休憩室には、エチケット商品も沢山売られている。 こういうのはホテルマンもホテリエも大助かりだ。 「今度はどこに向かえばいいですか?」 スッキリした顔で言うと、野木くんは口元をティッシュで押さえ拭きし、インカムを左耳に付けた。 「そういえば、さっき千田さんが乙葉は秘書に戻らないの?って言ってたよ。千田さんになんかしたの?」 「え?特に何も」 「秘書としても頑張れそうだったから考えてみてって言われたんだ」 「いや、私は現場で色々アレコレまだやってみたいかな!!」 食い気味にそう返して言えば、目を丸くして野木くんは笑った。 「現場の仕事楽しそうにやってるもんね。 わかった。じゃあフロントクラーク行って、流れ掴んできてくれる?」 「かしこまりました、ジェネラル・マネージャー」 野木くんにわざとらしいくらいに丁寧な会釈をしてみせると、グイッと手首を引かれて体がよろけた。 「行く前にキスだけさせて」 いいよ。と返事をする前に、軽くチュッと触れ合うだけのキスをされた。 もっと濃厚なのをされるのかと構えたのだが、あっさりとそれで済んでしまった。 物足りなさを感じてしまうのは、普段の野木くんが熱烈なキスをしてくるせいだろうか。 「メイク直したばかりなのに、激しいの出来ないもんね?」 ニヤリと、してやったような顔で笑った彼は、確信してやったのだと理解する。 「激しいのは、、、できないけど」 「けど?」 その先を促すように復唱され、かぁっと頬や耳に熱が集まる。 「もう一度ちゅーしてほしいです」 子供みたいにおねだりする日がくるとは思わなかった。 しかも休憩中に。 適度な距離感でいた彼は、再び私の腰を抱いて顎に手を添えてきた。 「うん、いいよ」 嬉しそうに顔を近づけてきて、唇を重ね合わせた。 触れ合うだけの優しいキスだったが、こころの奥底まで満たされていくような、じわりと温かな気持ちにさせてくれる。 「いつ人が来るかも分からないのに、こんなところでキスのおねだりするなんて、乙葉はイケナイ子だねー」 「?! 野木くんが煽ってきたのに?!」 「俺はいつだってしたいよ。 あ、戯れてる場合じゃないね!またあとでね」 額にキスを落とし、野木くんは急ぐようにその場をあとにした。 私情、ガッツリ挟み過ぎて無理そうです。
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