Case 05 対峙

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Case 05 対峙

 翌日。  私は由依さんとカフェで面会することにした。  由依さんから言われた一言は、予想通りの一言だった。  「真逆(まさか)、あなたが不倫の末に子供を授かるとは思いませんでした。私のためにもその子は堕ろしてください。」  「矢張りそういう反応ですよね。分かっていました。」  「それにしても優華さん、なぜ私の夫に手出しをしたんですか?」  「いや、手出しをしてきたのは理くんの方なんですが・・・。」  「そんな事はありません。絶対にあなたが手出ししたに違いありません。」  当然、話は堂々巡(どうどうめぐ)りを辿るだけだった。  私は、由依さんに謝りたかった。けれども、謝るだけの勇気が無かった。どうせ謝ったところで由依さんは赦してくれない。それは分かっていた。  そんな中、私のスマホに着信が入ってきた。  電話の主は万丈忍だった。  「もしもし?月島優華か。『逃げるは勝ちだが役に立たない』の君の降板が正式に決まったよ。理由はもちろん体調不良だ。」  「そうですか。ところで、私の体調不良の原因をネット上にリークしていませんよね?」  「何の話だ?リークはしていない筈だ。」  「隠したって無駄ですよ?どうせ、そのリーク情報を週刊誌に情報提供するという魂胆だったんですよね?」  「いや・・・僕は何も・・・。まあいいや。明日、別の女優への引き継ぎ式をやるから歌舞伎町の黒木屋に来てほしい。」  「分かりました・・・。」  そう言って、私はスマホの通話を切った。  「電話の主って、マネージャーさんですか?」  「いや、撮影中のドラマのアシスタントディレクターだ。厳密に言えば撮影中だったと言ったほうが正しいか。」  「まあ、私と違って優華さんは仕事がいっぱいありますからね。」  「由依さんって、仕事ないんですか?」  「仕事の方は理さんに任せっきりで、私は完全に芸能界から引退しています。()してや一児のママとして、私は活躍の場をインスタグラムへと移しましたからね。」  「そうだったんですか・・・。」  「それは兎も角、今回の件、私は赦していません。一刻も早く堕ろしてください。」  「いや、命を授かってしまった以上私は責任を持って育てるつもりです。」  「親権問題とかどうするんですか?」  「それは盲点だった。確かに、このままだと私と理くんの子供になってしまう。況してや不倫の子となるとこの子に背負わせる十字架はあまりにも重すぎる。矢張り堕ろすべきだろうか。しかし、倫理的に堕ろすのは拙い。どうすればいいのだろうか。」
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