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「私と理くんが離婚すれば、正式に片付く問題ではあるんですけどね。」
「矢張りそうなりますか。じゃあ、離婚すればいいじゃないですか。」
「そういう訳にもいかないんです。私と理くんは長い付き合いだし、今更離婚とか考えてもいません。もうすぐ子供が小学生になりますからね。今どきの小学生はカネがかかりますから。」
「ですよね・・・。」
「唐突に聞きますが、もしかして、私を殺そうと思ったりしていませんよね?」
「それは・・・。」
正直、私は由依さんに殺意を抱いていた。けれども、人を殺すことは犯罪だ。況してやせっかく仲良くなった女優仲間を殺すわけにはいかない。
しかし、私の中の黒い衝動が芽生えようとしていた。その黒い衝動は、やがて由依さんへの殺意へと変わろうとしていた。
私は、持っていたナイフを由依さんへと突き出す。
「ちょっと、優華さん!?」
「ごめんね。矢っ張りあなたには死んでもらおうと思って。」
「アレって女優の月島優華と星野由依だよな?」
「2人で言い争いとか、何があったんだ?」
私のやろうとしていることに、当然野次馬はざわつく。
「月島優華はナイフを持っているぞ!」
「拙い!兎に角警察を呼ばなければ!」
そんな声も聞こえる中、私は由依さんの胸にナイフを刺した。
一瞬の静寂の後、誰かの悲鳴が聞こえたような気がする。
当然、由依さんは意識を失っていた。
私がやったことは、悪いことだ。警察に捕まってもおかしくない。
やがて、救急車とパトカーの赤灯が見えた。
私は逃げようと思ったが、躰が上手く動かない。
人を殺したから当然だろう。
そして、刑事さんが私の腕に手錠をかける。
「月島優華、殺人の現行犯で逮捕する。」
――私は、殺人の疑いで現行犯逮捕された。
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