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Case 01 売れっ子女優
月島優華は売れっ子女優である。月9ドラマ『探偵コペルニクス』で主人公のバディ役を演じてからその人気は鰻登りであり、主演したドラマや映画は数知れず。つい先日には日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞も受賞したぐらいだ。
そんな中、新作ドラマの撮影が決まった。
今までミステリードラマでの刑事役を演じることが多かった優華にとっては異例となるラブコメドラマであり、当初は優華もオファーに難色を示していた。しかし、脚本家のラブコールにより見事ヒロインの座を掴み取ったのだ。
「今日から主人公の妻役を演じることになった月島優華だ。みんな、よろしく頼んだぞ。」
「よ、よろしくお願いします。」
現場の空気に、優華は緊張していた。しかし、主人公が人気俳優の星野理であると知った瞬間、優華のテンションは上がっていた。
「ほ、星野理さんですか!?私、ずっと星野理さんと共演したいと思っていたんです!」
「君が月島優華か。妻の由依から君のことはよく聞いている。こちらこそ共演できて光栄だよ。」
星野理は優華に握手をした。
――その握手が、月島優華と星野理にとって破滅の始まりだとは思ってもいなかった。
「お疲れ!ドラマの撮影は順調そうだね!」
「はい。憧れの理くんと共演できるだけで私のモチベーションは高いですよ。」
「今夜、飲みにいかない?ああ、もちろん妻の由依も同席だ。」
「ですよね。由依さんが居なければ不倫だと疑われてしまいますし。」
「なら、決定だ。」
こうして私は理くん、そして由依さんと飲みに出かけることにした。
「チェーン店の居酒屋で申し訳ないね。」
「いいんですよ。庶民的なところを見せるのが芸能人の仕事でしょ。」
「それはそうだな。」
「由依さん、理くんの事をよろしく頼むね。」
「分かってますよ。ラブコメってあまりやったことがないんですけど、撮影の方も順調に進んでいます。昨日クランクインしたんですけど、NGも少ないですし、思ったよりも早くクランクアップしそうです。」
「理くんは完璧主義だからね。映画でもNGが少なくて監督から褒められたって話。」
「映画ってことは・・・。『劇場版コンフィデンシャルマンJP』の機密弁護士役!」
「そうそう、それそれ。ドラマ自体はあまり視聴率が高くなかったんだけど、ネットの口コミとかでジワジワ人気が高まって映画まで上り詰めたんだ。それで、映画の方の撮影をしていた時に監督さんから『君はNGが少ないから助かる』って言われたんだ。」
「劇場版コンフィデンシャルマンJP、私も見ましたよ。理くんの弁護士役がめちゃくちゃ似合ってました。」
「優華さんって、本当に理くんのことが好きなんですね。」
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