10人が本棚に入れています
本棚に追加
「もちろん理くんが星野由依という最高の妻と付き合っていることを考えると、恋愛関係を持とうとは思いません。しかし、もしも理くんが独身なら私が結婚しても良さそうです。」
「なるほど、その発想はなかった。」
私はチェーン店の居酒屋で、そんな談笑を繰り広げていた。
「今日はありがとうございました!」
「こちらこそ!ドラマの撮影でも、理くんのことをよろしく頼みますね。」
「それにしても、由依と優華さんが女優仲間で本当に助かるよ。互いの情報交換とかも行っていこうかな。」
「いいね、それ!」
「じゃあ、グループチャットとかどうかな?」
「グループチャットは万が一週刊誌に流出した時が大変そうだが・・・。まあいいか。」
こうして、私はスマホのグループチャットに理くんと由依さんを追加した。
家に帰ると、早速理くんと由依さんから返事が来ていた。
「今日は飲み会ありがとう!また行こうね! ユイ」
「ドラマの撮影はまだまだ続く。これからもよろしく頼む。 オサム」
私は、なんだか嬉しくなってしまった。
そして、理くんと由依さんが羨ましくなってしまった。
確かに、私はドラマや映画の撮影現場でもよくモテているが、結婚に発展したということには至っていない。
私は、かつて鹿島アントリオンのとある選手と付き合っていたが、彼が海外に移籍した時に破局報道が出てしまった。厳密に言えば、破局したわけではないのだが、海外へ移籍するにあたり向こうから別れを告げられたと言ったほうが正しいだろうか。週刊誌やスポーツ誌はこぞって「人気女優と人気サッカー選手の破局」を報じていたが、私にとっては破局でも何でもない。ただ単に別れを告げられただけだ。
それ以降目立った恋愛感情を抱くことがなくなった。というよりも抱けなくなった。あのサッカー選手に未練があったわけではないのだけれども、あの別れの言葉を告げられた時に私の中で何かが壊れていったような気がする。
しかし、星野理には恋愛感情以上のモノ、つまり性的衝動を抱いてしまった。
それは、彼の笑顔がそのサッカー選手に似ていたからなのかもしれない。
拙い、このままでは私は本当に壊れてしまう。
――そう思いながら、私は自らの花弁に手を触れて昂ぶる感情を抑えていった。
最初のコメントを投稿しよう!