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Case 02 それぞれの苦悩
ドラマの撮影は順調に進んでいた。
物語のあらすじとしてはこうだ。システムエンジニアの夫と結婚したWebデザイナーの妻が、同業者同士で仕事に追われながらも夫婦生活を送るというドタバタラブコメディである。分類としては東京放送の火10に当たる。
そのドラマの中で、私はWebデザイナー役をやっている。もちろん相手となる理くんがシステムエンジニア役だ。
そんな中、私は理くんから飲みに行かないかと誘われた。
「優華、今日、2人だけで飲みに行かないか。ああ、もちろん由依には了解を取っている。密会とかじゃないから安心しろ。」
「2人だけでいいんですか?不都合とか生じたりしないんですか?」
「大丈夫だ。2人だけじゃないと話せなこともあるだろう。」
「それはそうですけど・・・。」
そんなことを言いながら、私はチェーン店の個室居酒屋へと入っていった。
「正直な話、由依との付き合い方に悩んでいてね。それで2人だけで密会がしたくなったんだ。」
「そうだったんですか・・・。2人共仲が良さそうだしあまりそんな風には感じなかったんですけど・・・。」
「そりゃ、10年も夫婦として付き合っていると何処かでガタが来る。セックスレスの事だったり子供の事だったり、何より夫婦としての仕事の事だったり考えないといけないことは山のようにある。僕の子供も来年小学生だ。今どきの小学校はカネがかかる。ランドセルやら入学料やら教科書代やら、考えないといけないことは多いんだ。」
「夫婦っていうのも大変なんですね・・・。」
理くんの言葉に、私は結婚願望が失せてしまった。
確かに、芸能人の結婚は大体的に取り上げられることが多い。けれども、失った時のリスクも大きかったりする。最悪の場合、芸能界からの引退通告も辞さないのだ。
それぐらい、芸能人というのは大変な職業なのだ。
そんな中、私はホテルへと誘われた。
「今日、ホテルにいかないか。ああ、ゴムは用意してある。」
「由依さんの事はいいんですか?」
「いいんだ。優華の顔を見ているとなんだか性欲が出てきちゃって。」
「まぁ・・・。」
理くんから発せられた言葉に、私の顔は紅潮していた。
確かに、私が理くんに対して性的感情を抱いていたのは事実だ。しかし、本当にセックスをするとなると感情の昂りが抑えられない。私の中の内なる獣が解放されようとしていたのだ。
その獣は、私を私でなくしてしまうために心の奥底へと封印していたのだ。そして、その獣を解放する日が来たのであった。
こうして、私と理くんは六本木のホテル街へと消えていった。
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