Case 03 死神

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Case 03 死神

 夜のラブホテル街というのは我々ゴシップ記者にとって格好の餌場である。数あるスターやVIPのゲス不倫を白日の元に晒してきたからだ。そんな中、私は星野理と月島優華がラブホテルに入っていくところを、偶然目撃してしまった。  かたや日本アカデミー賞受賞俳優、かたや売れっ子の女優である。そして、何より星野理と妻の星野由依はビックカップルとして世間を騒がせてきた夫婦だ。  これは大スクープだ。急いで週刊文潮に取り上げなければ。  私はスマホで隠し撮りをした2人の写真を文潮出版へと送信した。  もちろん、編集長の反応は(しっか)りとしたものだった。  「文晴くん、これはでかしたぞ。至急、週刊文潮の一面記事として載せるぞッ!」  「ありがとうございます。引き続き、この2人の動向を伺っていきたいと思います。」  数日後。  その記事が載せられた週刊文潮が発行された。当然、売れ行きは凄まじいものだった。  【大スター、赦されざるゲス不倫発覚!】  日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞したことも記憶に新しい星野理に、不倫が発覚した。お相手は人気急上昇中の女優、月島優華である。2人は火曜ドラマ『逃げるは勝ちだが役に立たない』で共演しており、その中での付き合いと見られている。  星野理といえば、10年前に星野由依(旧姓、古橋由依)との結婚が大きく報じられ、所謂(いわゆる)おしどり夫婦として知られていたが、このゲス不倫が2人の夫婦関係に(きず)が付かないか心配である。  現在放送中のドラマ『逃げるは勝ちだが役に立たない』は平均視聴率20パーセントの高視聴率を記録している。この件に関してドラマを放送している東京放送に問い合わせたところ「ノーコメント」の一点張りである。  この件に関して、「逃げるが勝ち」では済まされないのではないかと、私は思っている。(潮沢文晴)  「ちょっと理くん、これ、どういうことなの!?」  「いや、僕に聞かれても・・・。」  当然、由依は激怒していた。週刊誌から言われもない誹謗中傷を受けたから当然である。しかし、あの時優華と一夜を共にしたのは紛れもない事実だ。言い訳なんて通用しない。  そんな中で、僕は由依にあることを言われた。  「真逆、優華さんに手出ししたりしていませんよね?」  その質問に、僕は一瞬戸惑ってしまった。図星だから当然だろう。  そして、僕は質問に答えた。  「何より大事なのは由依だ。優華さんに手出ししたりしていないよ。」  「だったらいいんだけど。ただでさえ娘の小学校の入学試験が控えているのに、このタイミングで週刊誌にゴシップ記事が載ると娘の入学に瑕が付くわ。」  「そうだな。ここはゴシップ記者に対しておしどり夫婦をアピールするしかない。」  「ですよね。私たちも努力していきましょう。」
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