Case 03 死神

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 それからというもの、僕と由依は娘の入学準備で忙しかった。  ランドセル、教科書、学習机の準備・・・。  一応、芸能人である以上(まかな)えない金額ではないが、矢張りそれなりの金額はかかってしまう。  もしもあのゴシップ記事が大体的に拡散されたら、僕の仕事はなくなってしまう。ドラマの視聴率こそ好調だが、テレビ局からの話だとあのゴシップ記事以来やや下降気味にあるらしい。このままでは、拙い。  僕は、どうすればいいのだろうか。  あの一夜を無かったことにすべきなのか。それとも、由依に正直に話すべきなのか。僕は悩んでいた。  私は、あのゴシップ記事を読んで背筋が凍りついた。当然だろう。あの一夜の事が書かれていたのだから。  もちろん、事実無根のことも書いているが、大方の事はあのゴシップ記事の通りである。  そんなピリピリとした空気の中でも、ドラマの撮影は進んでいく。  全10話のドラマのうち、現在5話までが撮了している状態だ。  このまま行けば、後1ヶ月でクランクアップを迎えるだろう。  それまでに、なんとかしなければならない。  由依さんに謝るべきか。秘密を隠し通すべきか。    ――私は、悩みながら「道化師」を演じていた。
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