10人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうか。僕がなんとかすべきだろうな。とりあえず、この事は誰にも内緒にしておけ。ドラマのスタッフにも『ただの体調不良』であることを伝えておく。」
「ありがとう、理くん。」
「ああ、優華は僕にとって大切な人だ。でも、由依はそれ以上に大切な人だ。それは分かっている。」
こうして、私の妊娠は無かったことにされた筈だった。
しかし、私の秘密はいとも簡単に破られてしまうことになる。
その夜、私はたまたま動画サイトを見ていた。
猫の動画でも見て癒やされようと思っていたのだ。
しかし、トップページのサムネイル画像、そして動画のタイトルを見て私の背筋は凍りついた。
【日本アカデミー賞受賞俳優と売れっ子女優が不倫で妊娠!?】
私は、恐る恐る動画をクリックする。
「これは秘密事項なんだけど、星野理と月島優華のゲス不倫で月島優華が妊娠したらしい。当然、星野理の妻である星野由依はカンカンに怒るだろうな。これは週刊誌にも載っていないスクープだ。」
ネット動画で、私の妊娠がリークされていた。リークしたYouTuberは見覚えのある顔だった。『逃げるは勝ちだが役に立たない』のアシスタントディレクターを務めている万丈忍だった。
万丈忍は私に常に寄り添っているアシスタントディレクターだ。当然、今回の体調不良を真っ先に見抜いたのは彼である。しかし、動画サイト上にリークされた以上世間の目は冷たいものだろう。最悪の場合、ドラマは打ち切られるか私の降板は避けられない。
どうすればいいのだろうか。私は頭を抱えていた。
その時、スマホに着信がかかってきた。電話の主は星野由依だった。
「優華さん、私の夫に手出ししてませんよね?」
手出しをしてきたのは理くんの方なのに、なぜ私が疑われなきゃいけないのだろうか。それが分からなかった。
「優華さん、あなた、妊娠しましたよね?」
「なぜそれを知っているんですか?」
「例の動画にリークされていました。もちろんあなたの不倫も一緒に。」
由依の言葉に、私は反論できなかった。
「明日、一度会ってみませんか?もちろん理さんは抜きで。」
「わ、分かりました・・・。」
――厭な予感を感じつつ、私は由依と会うことにした。
最初のコメントを投稿しよう!