『音の海』

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波の音が十二音階を奏でる音の海がある。 波を鳴らす波奏者の私は、 他の波奏者といっしょにアンサンブルを奏でる。 いろいろな音が波に乗り運ばれてくる。 波の満ち引きに合わせて、 音になりそれを積み重ねて ひとつの曲にするのが私の仕事だ。 やがて日が暮れる。 日暮れのメロディは少し寂しげだ。 灯台の灯りが海を照らす。 船を見送る波音は別れのメロディ。 いつの間にか、 泣いている。 その涙の音さえ、 まるで美しい曲のように、 波に乗り聴こえる。 穏やかな夜の海の波音がかすかに聴こえる。 おやすみ、街よ 海よ  僕はもう帰るよ。 遠ざかる海獣の跫(あしおと)は、 シのフラットだった。 空と海、隣り合う血のつながらない 兄弟。あるいは姉妹。 最後には家族。 ありがとう。 ありがとう。 波は、言葉になり、 遠くの町の浜辺にたどり着く。 いつか、きっとこの歌声も。
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