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今日は、これから陽向の家に行こうと思っていた。
どうしようか悩んでいたら、後ろから声を掛けられた。
「美雨ちゃん、咲良ちゃん」
「先輩、こんにちは」
明るく答える咲良に対して
「智也先輩……」
美雨は、一瞬ドキリとして呼吸が止まった。
「車を置いてる駐車場に行くのに、カフェの前を通ったら、美雨ちゃん達の姿が見えたから。これからみんなでご飯食べに行かない?」
「あっ、私これから彼と会うので、また誘って下さい」
咲良は、ニッコリと微笑んだ。
「美雨、またね」
バイバイと手を振るとカフェから出ていった。
「美雨ちゃんは、どうする?」
心が揺れ動いて返事をするのに、一瞬時間が止まる。
「あっ……行きます」
────
レンガ造りの外壁がモダンな感じ。天上には星空をイメージするオブジェに囲まれている、素敵な雰囲気のお店だった。
「素敵なお店ですね。パスタも凄く美味しかったです」
「そう?喜んでもらえて良かった」
智也先輩は、優しい眼差しで美雨を見つめた。
「お腹もいっぱいになったし、帰ろうか」
智也先輩は、さっと、伝票を取ると会計を済ませた。
「あっ、私も払います」
「いいよ、僕が誘ったんだし」
「でも……」
「いいの、じゃあ……もう少し時間くれる?」
智也先輩は、美雨を車に乗せると、家まで送ると言う。
美雨の家の近くまで来ると、ウインカーを上げて車を止めた。シフトレバーから手を離すと、美雨の手を優しく包んだ。
美雨は、手を握られ一瞬ピクリとして、智也先輩の方を見た。
その反応に智也先輩は、クスリと笑った。
「大丈夫、襲わないから」
「いや、そんな風には、思ってません」
美雨は、恥ずかしくなって視線がうつむき加減になる。
「会う度に、美雨ちゃんの事が好きになってるんだ。そろそろ返事を聞かせてくれない?」
「あの……その……実は……」
しどろもどろに話そうとする美雨の手を智也先輩は、そっと自分の手を外す。
「ごめん……困らせてるよね。陽向くんの事が気になってる?」
そう言われて美雨は、ふらふらしているように見えるんだなと感じた。
智也先輩は、優しく美雨の頭を撫でた。
「ごめん……待つよ」
「ごめんなさい」
「謝らないで」
智也先輩は、美雨を優しく諭す。
「お家に入りな」
「今日は、ありがとうごさいました」
美雨は、お礼を言って車を降りた。
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