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家出をした夜、アキトは公園で空き缶を拾っているおじいさんに声をかけられた。
「一緒にやらないか、うちに泊めてやるし、たくさん拾えば小遣いだってやる」
おじいさんは髪も髭も伸びてぼさぼさで、長いことお風呂に入っていない人の匂いがしたけど、初めての家出で心細かったアキトは、おじいさんについていくことにした。
公園の生け垣の隙間、自動販売機のごみ箱の中や横、駐車場のフェンスの間や道のわきの溝の中……ひっそりと空き缶たちは待っていた。それをひとつずつ拾い上げて、ペタンコにして、おじさんの引いているリアカーに積んでいく。
「坊やはいい目をしているな」
おじいさんはそう言ってアキトの頭をぐりぐりなでた。蒸れたにおいがしてアキトは思わず息を止めたけど嫌だとは言えなかった。
その夜は、町を半分くらい回っただけでおしまいになった。
おじいさんは、アキトに自分の家に泊まっていくようにすすめたけれど、アキトは家が恋しくなっていたので、お礼を言って家に帰った。
もう遅い時間だったから、パパもママもすっかり寝ていて、アキトがこっそり家を出てまた戻ってきたことに気が付いていたのは、玄関の鳩時計くらいだった。
次の朝、ママはアキトの部屋がなんだか臭いと言って鼻をひくひくさせていた。
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