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それから何ヶ月家に閉じこもっているのかもわからない。だが久しぶりに外に出ると、寒かった外は少しずつ暖かみを取り戻しつつあった。 そろそろ貯金でダラダラ生活するのにも飽きてきた、かと言って今更バイトなんて。今まで自分のためだけに働いたことなんてなくて、いまさら1人で生きていくために頑張るなんて想像できなくて。つまり何が言いたいのかというと、俺は誰かのためにしか生きられない残念な男だったということだ。こうやって1人で死んだふりしないと気づきもしなかった。 そうだ、それなのに、 「貴方が伊藤悠氷(いとうゆうひょう)くん? そしてこちらにいる私が連れてきた娘が妹の伊藤美雪さんでいいのかしら?」 何故だ、何故妹がそこにいる。いつの間にか家に入ってきた不法侵入者の女の人なんて気にならなかった。さっきまで自分の身体だと思えないぐらい虚だった身体は急に活発になる。まるで人形のように無表情でソファーに座り動かない妹の頭をそっと撫でると、温かい。あの冷たい肉塊じゃない、そこに居たのは、紛れもなく、妹だった。 「ッ……美雪!! ごめん、ごめんな……」 抱きしめても何も反応しない。どうしてしまったんだ。言いたいことはいくらでもあったが、まずは再会を1人喜んだ。唯一無二の宝物は、俺の天使は、舞い戻ってきた。
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