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妹
虚な身体で外に出た。
部屋から出るのは何日振りだろう、ちゃんとトイレに入ってたんだっけ、少なくとも食事と風呂は笑いされていたような気がする。久しぶりに太陽の日差しを浴びて目を覆う、そして再び戻ったと思われていた現実味は再び体を虚なものに変えてしまった。
………………………………
妹が死んだ。俺の宝物だ。家族を早いうちに亡くした俺達は2人で生きていくと決めた。俺は高校に入ってすぐにバイト三昧、妹はまだ小学6年生なのに毎日ご飯を作ってくれていた。久しぶりにバイトが休みで、今日は2人でファミレスで晩御飯を食べようと約束していたのに。
「……美雪遅いなぁ」
準備に手間取っているのか、現地集合を約束していたというのに妹はなかなか来なかった。家に戻ってみたけど、美雪は居なかった。
……会えたのはそれから数時間後、病院で1人冷たくなった美雪の遺体。久しぶりに一緒の夕飯が食べられるとはしゃいでいた妹は、通学路でトラックに撥ねられた。打ちどころが悪かったのか、ほぼ即死だったそうだ。寒空の下、救急車を待つことすら出来ずに最も容易く死んでいった俺の宝物。抱きしめたそれは最早妹ではなく、ただの冷え切った肉塊だった。
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