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それからも何度か同じことがあった。
そしてついに祖父は母と病院へ行った。
祖母から祖父の話を聞いて不安になった母が地元の小さい病院ではなく、都心部の大きな病院で調べてもらった方がいいと祖父を説得したのだ。
さすがに病院嫌いな祖父も、自分だけに聞こえる謎の雨音に不気味さを感じたのだろう、しぶしぶ病院へ行くことを決めた。
「じいちゃん、大丈夫かな?」
母の車に乗った時の祖父の不安そうな顔を思い出し、僕も不安になってしまった。隣に立った祖母の服の端を握り顔を見上げた。
「大丈夫よ、大丈夫」
祖母はそれだけ言うと僕の手を少し強く握って家の中へ戻った。
夕方頃、祖母が台所で夕飯の支度をし始めたとき玄関から母さんと祖父の声が聞こえた。僕は急いで玄関まで走って行って、靴を脱ごうとしていた祖父に抱き着いた。
「じいちゃん、おかえり!」
勢いよく抱き着いた僕を少しよろけながら受け止めてくれた祖父の顔は、今朝病院へ行くときに見たあの不安そうな顔ではなかった。
「何ともなかったぞ!」
嬉しそうな祖父の隣にいる母は少し納得できないような顔で立っていた。
「本当にどこも悪くなかったのよ……」
そう聞いてほっとしたような顔の祖母。
僕は祖父が何ともなかったことがわかりすっかり安心した。
「さぁさぁ、夕飯にしましょう。二人とも手を洗ってきて」
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