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わたしは、真紀奈が利香奈を突き落としたのかウサギのぬいぐるみの呪いで利香奈は殺されたのかわからない。
それか、利香奈が崖から足を踏み外して落ちたという可能性もある。
だけど、当時のわたしはとにかく利香奈が死んでしまった現実と真紀奈の狂気が恐ろしくてあの日の出来事を封印してしまった。
だから、怯えるわたしの為にお父さんとお母さんは利香奈の名前を出さなかったのだと思う。
ーーーー
「利香奈、忘れていて本当にごめんね」
『わたしは、沙和奈お姉ちゃんにわたしのことを思い出してほしくてもふもふウサギさんに真っ赤な薔薇の配達をお願いしたんだよ』
「……そうだったんだね」
『うん、わたしの魂は、ずっとこの家の中にあったんだよ。この物置の中でもよく遊んだね』
利香奈のその声は震えていた。けれど、少しだけ穏やかになったような気もする。
「利香奈、ごめんね。わたしは、悪魔になれなかったよ」
『それはいいよ。真紀奈お姉ちゃんは苦しんでいるしそれに沙和奈お姉ちゃんはわたしのことを思い出そうとしてくれたもんね』
わたしは、「うん、利香奈のことを思い出せて良かった」と利香奈の声に頷いた。それと、ちらりと真紀奈を見ると唇を強く噛み続け血を流していた。
もふもふウサギが一瞬人間の女の子に見えたのはきっと利香奈の顔だったのかなと思う。
それから数日後引っ越しはなぜか中止になった。利香奈、良かったね。
「完」
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