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わたしは時々この優等生の妹がいなくなれば良いのになと思うことがある。
そしたら、お父さんもお母さんもわたしに優しくしてくれるのではないかな。優等生ではなくても一人娘だったらきっと……。
勉強ができなくても朝寝坊してもわたしだけを愛してくれる。
『お前は頭が悪い。真紀奈を見習え』なんて言わない。
真紀奈なんかいなければいいのに。
わたしは、そんなことを考えながらはちみつをたっぷりかけたトーストを口に運んだ。トーストの香ばしい食感とはちみつのジワリとした甘さが口の中に広がる。
「沙和奈お姉ちゃん」
名前を呼ばれてわたしは顔を上げた。すると、真紀奈と目が合った。ちょっと意地悪なことを考えていたので、なんだか後ろめたい気持ちになった。
「えっと、何かな?」
わたしは、慌てて返事をした。
「口の周りにはちみつがべったりくっついているよ~」
「えっ!」
「あははっ、沙和奈お姉ちゃんって食べ方が汚いね」
なんて言って真紀奈は、背筋をぴーんと伸ばしてクスクス笑っている。
わたしは、「ほっといてよ」と言ってテーブルの上に置いてあるウェットティッシュで口の周りを拭いた。
やっぱり真紀奈が憎い。
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