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物置の中でわたしは、見えない姿と『助けて』と言うその声とウサギのぬいぐるみと過ごした。
物置の中はじめじめした嫌な空気が漂っている。この場所から逃げ出したいのに足が動かない。
それに、思い出さなければならないことがあるはずだ。この物置の中でわたしは、何かを見たような気がする。
その何かはなんだった? わたしの笑顔と真紀奈の笑顔が頭の中に浮かんだ。
『沙和奈お姉ちゃん』と真紀奈が微笑みを浮かべた。幼い頃の真紀奈は可愛らしかった。
真紀奈は、本当に可愛らしかった?
違う! 可愛くない。真紀奈あの子は。
頭の中がごちゃごちゃしてきた。
その時、視線を感じた。何かがわたしを見ている。視線を感じた先を見ると、ウサギのぬいぐるみと目が合った。
『沙和奈お姉ちゃん』とそのぬいぐるみが言ったような気がした。
そして、そのぬいぐるみの目から……。
嘘でしょ!? そんなことがあるなんて恐怖のあまりすぐに声が出なかった。
だって、ウサギのぬいぐるみの目からたらりと血が流れていたのだから。
「う、うわぁーーーー!!」
わたしは、悲鳴を上げた。
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