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物置の中は悲しみと恐怖に包まれた。利香奈の思いがじわじわと胸に響く。
『お姉ちゃん達、このぬいぐるみ覚えているよね? よく見て』
ウサギのぬいぐるみがぽわんと宙に浮かび上がった。
目から血を流していたあのウサギのぬいぐるみだ。確かに見覚えがある。
わたしは、宙を浮くウサギのぬいぐるみをじっと見た。
すると、忘れていた幸せと悲しみの記憶がよみがえってきた。可愛らしい笑顔で微笑む利香奈の笑顔を思い出した。
どうしてこんなに大切なことを忘れていたのだろうか。わたしの目から涙が零れ落ちた。
「利香奈、忘れていてごめんね」
『沙和奈お姉ちゃん思い出してくれたの?
ありがとう』
「一緒にぬいぐるみでごっこをしたね」
『うん、楽しかったよ』
わたしの頭の中に二人の妹の笑顔と悲しくて悲惨な記憶がよみがえってきた。
過去の嫌な記憶を忘れるために利香奈の存在そのものを封印していた。
わたしはなんて酷い姉なんだろう。
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