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『うわぁー! 利香奈ーーーー!』
わたしは、これ以上出せないというほどの声を喉から絞りだし叫んだ。
崖の下には頭から血を流している利香奈が倒れていた。
『沙和奈お姉ちゃん……わたし』
振り返ると真紀奈が赤い目でわたしを見ていた。
『真紀奈が利香奈を崖から突き落としたの?』
わたしは真紀奈を睨み付けながら聞いた。
『違うよ、わたしは、突き落としてないよ。ウサギのぬいぐるみが呪い殺したんだよ』
そう言った真紀奈の目からポロポロと涙が零れた。
『なんてことをしたのよ!』
わたしの目から悲しみと怒りの涙が零れた。
『……わたしは、苦労もしないでニコニコ笑っているだけでお父さんとお母さんから愛される利香奈が羨ましくてだからウサギのぬいぐるみにお願いしたのよ』
あの日そう言って俯いた真紀奈の気持ちが今のわたしの真紀奈への思いと重なった。
わたしも両親から愛されたかった。お前が一番大切な娘だよと言ってもらいたかった。
だから、わたしも真っ赤な薔薇の花に『真紀奈を痛い目に遭わせて』とお願いした。
だけど、わたしは、階段から落ちそうになった真紀奈を助けた。
馬鹿みたいだと思うけれど、真紀奈は大嫌いでもわたしの妹だから。
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