出会い

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出会い

バージル・キャラウェイは皇帝に連なる、傍系皇族であり、 紋章付き貴族の嫡男であった。 が、これも彼にとっては、どうでもよかった。 生まれ持っての見た目、顔立ちは、キャラウェイ家の中でも 端正で美男と言える。 が、本人は、まったくその事を、気にするようではなかった。 彼の関心は皇国の歴史、それもはるか昔の皇族が、 妖精や精霊やドラゴンなどを使役していた時代。 特に、 彼が強く興味を持ったのは、時折、歴史の中で現れる 皇族と魔女との関わりだった。 彼は、大学でも歴史の授業を持っていたが、 暇ができると、辺境の歴史ある 建物や石碑、その他の、宗教施設の跡をめぐって歩いていた。 今回の石碑のある場所は、鳥のさえずる声しかしない、 道からはずれた寂しい場所だった。 バージルは、石碑の文字に紙を あてて、木炭でこすっていく作業に没頭していた。
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