ふところ

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盛大な一雨ののち、重く濃い灰色の空が薄くなり始めたのを見計らって、わたしは頼りない折りたたみの傘を組み上げ始める。 ポキポキと骨が組まれていって、開ききったその姿は。不格好な見た目と軸の短さとは対照的に、まともに雨をしのいでくれて、それが止めばまた小さく鞄に収まってくれるのだから大変好ましい。 強い風が吹いたらひとたまりもないけれど。そんなものには、そんな時に備えたように、骨が数本多い屈強な傘くらいしか耐えられないだろう。 そんな傘のために雨が小降りになるのを、この東京からの行き止まりの中途半端に賑やかな駅で待っていたわけではない。 ただ、出先で少し、味の濃い食べ物を口にしたかったのだとか、一時住んでいたこの地がどれだけ変わったのかをこの商業施設の品揃えから見定めたいとか適当に理由を付けて。 電車が着いてから1時間もぶらついて、ついでに、口の中でパチパチと弾けるアイスクリームを食べていたところでようやく、ここから出るかと、そういう気になった。 アイスクリームはどこまで食べても甘く、口の中に休まる暇を与えてくれない。
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