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序章:再生回数125億回! 大人気中華WEBドラマ「金龍聖君」最終回より
「もう終わりだ、蒼翠」
雄々しくどこか触れてはいけない神秘的な美を持つ男・無風が突き出す白銀の剣先が、韓紅の瞳の男・蒼翠の喉元に突きつけられる。
満身創痍の姿で地に膝を着けた蒼翠は、頬に滴る血を拭うこともせず無風をギロリと睨み上げ笑った。
「ハッ、ご立派になったもんだな、無風。ついこの間まではなんの力もなく、俺にすべてを奪われるばかりだったのに」
形勢は完全に蒼翠の敗北を指している。しかし、それでも蒼翠は傲慢な物言いをやめようとしない。
「お前が白龍族の皇子だと知っていたら、もっと壮絶な絶望を与えてやったのに。まったく……あの女を殺しただけでは足らなかったな」
「蒼翠、貴様っ!」
白銀の剣先が怒りに押され、蒼翠の首の皮膚をわずかに裂く。が、蒼翠は今さら傷の一つが増えたところでどうということもないと、韓紅の瞳を歪めなかった。
「お前とあの女は恋仲だったそうだな。だったらただ殺すだけでなく、より痛甚振って、四肢もすべて引き裂いてやればよかった」
「黙れっ! それ以上、汚い口を開くな!」
辺り一面、瓦礫の山に埋まる中で怒声が響き渡る。
しかし、すぐに平静を取り戻した無風は、深い呼吸を一つした。
美しく透きとおった金色の瞳が、スゥーと細められる。
「黒龍族第八皇子・蒼翠。悪の所業を尽くした貴様を生かしておくわけにはいかない。これまで無慈悲に命を奪われてきた者たちに代わって、私が貴様を誅する」
神すら射殺さんほどに冷たい眼光で告げた後、無風は手の中の剣を大きく振り上げた。
「地獄へ堕ち、煉獄の炎に灼かれろ!」
そのまま、剣が厳酷に振り下ろされると、瞬く間に大量の朱血が宙に飛び散った。
飛沫の一部が頬へとかかり、無風の美しい顔(かんばせ)を汚す。
しかし無風はわずかも気にすることない。それどころか浮かべた表情はすべてをやり終えた達成感で満ち溢れていた。
「仇は取ったぞ、隣陽」
空を見上げ、亡き恋人へ向けて静かに祈る。
「どうか、安らかにーーーー」
今日、世界から巨悪が葬り去られた。
大切な人は二度と帰ってこないが、これで黒龍族に虐げられていた者たちは解放され、輝かしい未来が始まるだろう。
暗黒の時代は終わった。
今よりすべてが変わる。
不遇に死んでいった者たちへ静かな祈りを捧げると、無風は動かなくなった蒼翠に背を向け、ゆっくりと歩き出すのだった。
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