Decay

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 僕らの――もともとケヴィンのものだけど――屋敷は、森の中に身を隠すように建っている。ご近所さんもいるにはいるが、なんだか訳ありなんだろうなという感じで、いい感じに距離を取り合って接している。顔を合わせれば笑顔で挨拶はするが、それ以上は踏み込まない。これも時代なんだろうか。昔はすぐに噂になったり陰で有ること無いこと言われたり、無遠慮に詮索してきたりされたもんだけど。  ケヴィンはどこに行ったのかって? それはほら、察してよ。  僕には血が流れていないからさ、外で供給するしかないんだ。  僕はケヴィンに血を吸ってもらえないことが、僕じゃない他の誰かの血をケヴィンが啜ることが、とても悔しい。けれどケヴィンはそれでいいって言う。食糧に情はかけたくないんだとか。ケヴィンだって長い年月を生きてきた中で、いろんなことがあったんだろう。それに、血を吸ってしまえば不老不死の力を与えることになってしまう。終わりのない地獄へ道連れにはしたくない、ケヴィンはそうも言っていた。  ケヴィンは気位が高くて、口数も少なく、冷たい印象を与える。他人にはやや高圧的をとったりもする。でも本当はそうでないことを、今命ある生物の中で知っているのは多分僕だけ。本当にケヴィンはとても優しいし、一人が嫌いなさみしがり屋だ。  長過ぎる人生に嫌気がさしながら、残されることにうんざりしているふたりが、身を寄せ合って、それでもまだ、生きている。
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