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節々が痛む。動くたびに軋むような音が鳴る。
そろそろなのかもしれないな。
ケヴィンと一緒にいるときは、なるべく動かないようにしよう。
音を聞かれないように。
「ルカ」
「ん?」
「最近様子が変だが。何かあったのか」
ケヴィンはなんでもお見通しなんだな。嬉しくなって顔がふにゃけてしまう。
「そう? 別に何も……」
僕のふにゃけ顔がお気に入りのケヴィンが、僕を抱きかかえて自分の膝の上に座らせた。この姿勢は、今の僕にはちょっとキツい。
「どうした?」
「ううん……」
畜生、痛覚なんて搭載しなくてよくない? 余計なところまで緻密に再現しなくていいっての。
ケヴィンの冷たい唇が、僕のに押し当てられた。冷たいけど、柔らかくて気持ちいいケヴィンの唇。大好き。
「大丈夫か?」
「うん、全然」
めいっぱい顔をふにゃけてみせるけど、うまく出来てるかな。
「――近いのか」
ケヴィンのその言葉に、飾り物の心臓が飛び出しそうになった。
「な、にが」
「ルカとの、別れ」
言葉にしないで。衝撃で頭がクラクラしてきた。脆いものが嫌いなケヴィンには隠しておこうと思ったのに。無様な姿は見せたくないから、動けなくなる前に、この屋敷を出ようと思っていたのに。なんで気づくんだよ!
「永遠じゃ、ないんだよな……」
赤い瞳が翳る。そして強く抱かれた。痛い。もう抱きしめられても、幸せだと感じることができなくなっていた。
吸血鬼の命は永遠だけど、アンドロイドはそうじゃない。人間からしたら超長命なんだろうけど、吸血鬼から見れば人間やその他の生物と同じ『終わりあるもの』にすぎなくて。せめてケヴィンに血を吸われて、仲間になれたら良かったのに。長すぎる人生を疎ましく思っていたくせに、こんなことまで考え出したのは、他でもない、ケヴィンとなら永遠を生きるのも悪くないって思ったから。
遺されて、遺されて、何度も何度も泣いてきた。
ついに、遺してゆく番か。
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