第4章(3)ツバサside

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第4章(3)ツバサside

今日は、ミヅクさんとの下剋上(げこくじょう)当日ーー。 先日通信機に届いた指定の場所、夢の配達人の隠れ家の一室へと向かう。 部屋の前まで辿り着くと、事前に待機してくれていたノゾミさんが扉を開けてくれた。 「ツバサ君、おはようございます。 ミヅクは只今準備中ですので、どうぞ中でお待ち下さい」 「おはようございます。……失礼します」 笑顔で迎えてくれたノゾミさんに軽く会釈をしながら挨拶を返すと、部屋の中へ足を踏み入れる。 部屋の中にあったのは、小さな机と、対面になって座れる椅子二つのみ。まるで、テレビや映画で観る警察の取り調べ室のように殺風景だった。 ここで、果たしてどんな下剋上が行われるのかーー……? ミヅクさんの特技は、研究、薬品の扱い、特に毒薬。 指定場所がこの部屋だと言う規模を見れば、格闘や鬼ごっこのように暴れ回る事で決着を着けるとは考え難い。 そして、用意された対面の席。ミライさんや瞬空(シュンクウ)さん相手ならば腕相撲なども可能性に入るが、力技を得意としないミヅクさん相手ならばチェス、将棋、囲碁、もしくはクイズやペーパーテストのような頭脳戦の可能性が高いだろう。 そんな風に、自然と下剋上の内容を目に入ってきた情報から探っている自分に気付いて、俺は少しホッとした。 昨夜はあまり眠る事が出来ず、正直、気持ちもなかなか上がらないままだったんだ。 こんな状態で、下剋上なんて出来るのだろうか? しかも、相手は白金バッジの一人であるミヅクさんーー……。 ここに……。 この場所に来るまで、不安しかなかった。 今でも、不安が全くないか?と言ったら嘘になるだろう。 けど、やるしかなかった。 いつまでも、立ち止まっている訳にはいかないから……。自分の為にも、そして、ランの為にも、今日この場で白金バッジを手にするしかないんだ。 目を閉じて、すうっと深呼吸をした直後だった。 部屋の扉が開き、俺とは対照的な明るい声が響く。
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