第1章(1)ツバサside

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第1章(1)ツバサside

港街、船着場ーー。 「んー!到着〜!!帰ってきたね〜ツバサ!!」 ピョンッと船から降りたジャナフが海風を感じ、気持ち良さそうに伸びをしながら俺に言った。 そう、帰って来たんだ。 約二ヶ月の長期任務からーー……。 夏の暑さが和らいだ秋。 俺は瞬空(シュンクウ)さんに言われて行っていた任務を無事に終えて、地元であり、夢の配達人の隠れ家がある港街に帰還した。 雨に恵まれない地を訪れ、アメフラシの儀式を行う蓮葉(レンハ)様の護衛ーー。 それが、瞬空(シュンクウ)さんが俺に与えた下剋上再戦への条件だった。 この条件を出された時は正直、下剋上の再戦をしてもらう為に仕方なく行った、という気持ちの方が強かったが……。今は違う。 きっと瞬空(シュンクウ)さんは、この条件を出した際から俺に足りないものが分かっていて、それに気付かせる為に任務に行かせたんだ。 お陰で俺は自分にとって必要な事に気付け、色んな事を学び、経験して、確実に心身共に成長出来たと思う。 この二ヶ月、一度も下剋上を行えなかったが、この時間は決して無駄じゃなかったーー。 そう、自信を持って言えるんだ。 今は人が多い港街に帰還する、と言う事にあたって左目に眼帯を着けているが、外していても他人の心の声や考えがむやみやたらと入ってこないようにだいぶ制御(コントロール)出来るようになった。 自分を受け入れて、これからはしっかりと向き合って生きていこう、って思える。だから……。 「帰って来たからには、きっともうすぐ次の下剋上の日程が決まるよね? ツバサ、どう?緊張してる?」 そうジャナフに尋ねられた俺は、笑顔で答える事が出来るんだ。 「いや、全然。むしろ楽しみだよ」 来年の8月までに、夢の配達人上位10名のバッジを奪うーー。 その目標に向かって、俺は燃えていた。 しかし、そんな俺を肘でつつき、ニヤニヤしたジャナフが言う。
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