第1章(1)ツバサside

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「でもさ〜ツバサ。もう一つ大変な事があるんじゃない?」 「?……大変な事?」 「蓮葉(レンハ)様の事だよ。"あの返事"、しっかりと考えないとね〜」 あの返事ーー。 そうだった。 ジャナフに言われて、俺の頭の中には別れ際に蓮葉(レンハ)に言われた事が鮮明によみがえってきた。 それは、アメフラシの儀式を終え、蓮葉(レンハ)蓮華(れんか)国に送り届けた際の事。 俺もすぐに帰還が決まっていたから、バタバタと慌ただしく馬車に乗ろうとした最中。 突然、蓮葉(レンハ)が「あ!」と声を上げ、「ツバサ!忘れ物じゃ!」なんて言うから、俺はすっかり油断していた。 その直後に胸ぐらを掴まれ、グイッと引き寄せられ……。なんと、左頬にキスされた。 「ふふっ、これでわしとレノアは同等じゃ!」 そして、驚き左頬を手で押さえる俺に、蓮葉(レンハ)が言った。 「言うておくが、わしは其方を婿にする事を諦めてはおらぬぞ? 瞬空(シュンクウ)に勝ち、レノアを救い、もっともっと良い男になってくれ! その間に、わしも良き女になる。もっともっと自分を磨き、レノアよりも、どの女性よりも輝いてみせる! ……だから、その際はもう一度考えてくれ。わしの事を、女として見た、其方の返事がほしい」 真っ直ぐな瞳。 いつもの無邪気さの中に、女性の美しさを感じた表情に、俺はすぐに返事が出来なかった。 レノアよりも蓮葉(レンハ)を好きになる可能性がある、と言うよりは、きっと俺はもう一度見たかったんだ。 自分も目標を達成し、成長した時に、蓮葉(レンハ)もまたどのように変わっているのかを……。 「ーー……分かった。 全部終わったら、また会おう」 だから、俺はつい、そう返事をしてしまった。 「っ、約束じゃぞ!楽しみにしておるからな!」 俺の返事に蓮葉(レンハ)は嬉しそうに微笑って……。俺達は笑顔で別れた。
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