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ついつい声を上げて椅子に座っている姉貴の方を見ると、姉貴は小さく「うん」って頷きながら伏し目がちで微笑った。
?……姉貴?
俺には、その笑顔が少し寂しそうに見えた。いつもの、姉貴の明るい笑顔じゃない、って思ったんだ。
その、どこか気不味そうな表情に違和感を覚えると、母さんが言った。
「大丈夫よ、病気じゃなかったの!」
「え?……病気じゃ、ない?」
病気じゃない。
そう言われても、ピンッとこない俺。
だから母の次の言葉に驚いて、俺はまた言葉を失ってしまう。
「そうよ。ヒナタね、おめでたなの!」
「……。……え?」
「おめでたよ、おめでた!
分からない?赤ちゃんが出来たのよ!」
……。
……え?っ、……赤、ちゃん?
目の前の嬉しそうな母の表情を見つめながら、俺は必死に頭の中を整理する。
姉貴が倒れた。けど、それは病気じゃなくて妊娠による体調不良だった。
つまり、おめでたい事。
何とか、そういう考えまでたどり着く。
が、次に俺の中で浮かんだ疑問は……。
ーー……一体、誰との?
「本来ならお付き合いさせて頂いた際にお伺いするのが礼儀なのに、ご挨拶が送れてしまい……。しかも、大切な娘さんを妊娠させてしまい……。
順番が色々と逆になってしまって、本当に申し訳ありませんでした」
俺の疑問と同時に聞こえた、椅子から立ち上がる音と、ミライさんの声。
ゆっくり視線を向けると、ミライさんが母さんに向かって深く頭を下げていた。
その光景を見ても、まだ、突然の現実を受け止めきれない俺の前で、話は進む。
「全然気にしてないわ!相手がミライ君なら私も安心だし大賛成!
お仕事、忙しいものね。私も元白金バッジの妻として、その辺は理解してるから大丈夫よ」
「ありがとうございます」
母さんの言葉に顔を上げて、ミライさんが微笑ってる。
その表情を見て、俺はようやく冷静に状況を理解した。
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