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龍侒寺    「こんちはぁー!ゴメンくださーい!」 「はーい」 「あ!聖雲さんこんにちは!」 真っ黒に日焼けした、檀家の斎藤さんの巧君が 玄関先に立っていた。 確か高校生だったと思う。 「おー、巧君こんにちは。どうした?」 巧君は白いビニール袋を見せると 「じいちゃんが梨持ってけったんで、これどう ぞ」 私に差し出した。 「わー!凄い大きいね。こんなにいっぱい?」 「常温だとすぐ悪くなるから、冷蔵庫に入れてっ て言ってました。」 「ありがとう。頂くよ。おじいさんは元気?」 「はい!相変わらずです。」 巧君は思案を巡らし、言うか、言うまいか迷って いたのを見てとれたので 「?どうした?何かあった?」 と聞いてみた。 「んー、あの、道の駅とコンビニがある交差点あ るじゃないですか、」 そう巧君は切り出した。 「部活終わりで、通るんですけど、」 「ロングコート着た、背が高い人がいつも立って いるんですよ。多分男の人だとは思うんですが」 「うん、うん、」 「だって、今暑いのにコート着てるのおかしい じゃないですか。」 「その人の顔見た?」 「いや、怖くて見ちゃいけないような気がして」 「うん。目合わせちゃ絶対だめだよ?遠回りでも 迂回出来ないかな?」 「はい。なるべくそこ通らないようにします。」 「失礼します」そう残して巧君は帰って行った。
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