1人が本棚に入れています
本棚に追加
「さて……」
転送装置を手にした大知は、喜びでいっぱいだった…と言う訳では案外なく、非常に悩んでいた。
「ふう…どうするかな…」
警察から転送装置を貰った後、大知はほとんど電話としてしか使ったことがないスマホで、電脳世界「ニューワールド」について調べていた。
政府の公式サイトをしばらく見ていると、「今までの人生を捨て、新たな自分を。」とあった。つまりはそれまでの人生でのことが全てリセットされるのだ。やっと手にした課長の座も。コツコツ貯めた貯金も。電脳世界に行ったら…二度と元の世界に戻ってこれない。
「残るのは記憶だけ…」
しばらく迷っていたが、これまでの人生を思い返してみても、大した失敗も成功もせずに、ただただ社会の歯車として変わらない平凡な人生を生きてきた。つまらない日常を変えるチャンス…「ニューワールド」で、新たな人生を歩めるなら…!
「リングを頭にはめて…赤いボタンを押すだけ?」
いざとなると手が震える。だが自分は変わると、覚悟を決めたのだ!
「いざ…ニューワールド…!!」
ボタンを押した瞬間、ブォンと蜂が飛んでいるような音が聞こえ、視界が真っ暗になって……意識が飛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!