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「あああああ!あ、ああぁ…って!これは!」
落ちた先はさっきのような無機質な空間とは違って、ビルが連なる大都市だった。この光景には大知も息を呑み、
「ここは、東京より何倍もすごいな……」
思わずそんなことを呟く。実は彼は地元は超田舎で、初めて東京を見た時は非常に感動していた。だが、
「ん、何だあの行列?」
大知の視線の先は、一際大きいビルの入口に並ぶ沢山の人。いや…アバターは人の姿では無い者もいた。
「とにかく、行ってみるか?」
「はいはーあい、スネークゲームの仕事はこっちですよ〜」
行列にいた警備員は、何とスネークゲームの仕事と言っていた。スネークゲームってあのスネークゲームか?!あの…一回やると地味にやり続けちゃうあのスネークゲームか?!
「スネークゲームの仕事…だとぅお! あのー、何ですか、スネークゲームの仕事って。」
「あなたは……」
「何です?」
「フフフ。いえ、何でもありません。この世界の仕事とは、簡単なミニゲームなんです。」
おそらくこのアバター、<パラガスマン>を笑っているのだろう。それもそのはず、声はおっさんなのに、この格好である。ミスマッチ!!
「ええ?!仕事っていうか遊びじゃないですか!あれ、でもお姉さんは警備員…ああ、普通の仕事もあるんですね。」
「いえ、私はAIですので。」
「いやいや…どう見ても人でしょ。」
「AIです。首のところに、番号が書かれているでしょう?」
「うわ、本当だ!」
容姿も声も、仕草まで、何も違和感は無い。技術の進歩は凄いと、しみじみするのであった。
「では、スネークゲーマーがご希望ですか?」
「あ、はい!入社条件はどんなですか?」
「はは、そんなのありませんよ。だってスネークゲームですもの。この場で入社できます。サインするだけで。」
「無いだとぅお?!」
大知はあまりの驚きに気持ち悪い声が出てしまった。本来の会社だったら書類を送り面接をetc…サインするだけで入社できる等、絶対、ゼーーッタイないのだ。
「じゃあ、ここにサインを。」
「あ、ペン貸していただけますかね?」
「いえ、手をかざすだけです。」
「へぇ!凄い!」
大知が手をかざすと、どこからか黄金の羽ペンが現れ、自動で「藤岡大地」の字を刻んだ。書き終わると、上空に消えていったのだった。たかがサインで超度派手演出である。だが、男のロマン心をくすぐる!かっちょいい!
「では、これにて契約完了となります。もう、後からは変更できませんので、ね?」
「ハハ、そりゃ契約ですからね。それにしても随分とかっこいい演出だな。」
「スネークゲーマーの仕事場は「エリアSNAKE」でございます。これをどうぞ。」
AIが渡したのはスマホのような白い機械だった。
「これは、凄い機能な、すごーくスマートなフォン、略してスマホです。」
「最初っからスマホで良くないか…?」
「あなたの場合だと、
電源をつける>ワープする>エリアを選択>エリアSNAKEに転送
の順で選択すれば簡単に仕事場に付く、すぐれものです!」
「ワープ!電脳世界だからこそですなあ…」
「では、明日から<<仕事>>ですので、寮に行ってお休みください…ワープしておきますね。」
「寮あんのか!ホワイト過ぎだろ!」
「では、さようなら。ワープ!!」
AIが言い終わると、自分の体が手、足、太ももと言った順でどんどん透明になっていき、やがて全て透明になった。
「おいおい、これ大丈夫なのか?!うああああ………」
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